今年(2020年=令和2年)7月10日から、相続をめぐる紛争を防止するために有効とされ、自書さえできれば遺言者本人のみで作成できる「自筆証書遺言」を、法務局(遺言書保管所)が新たに保管する制度がスタートしています。

制度の開始にあわせ、実際に自ら「自筆証書遺言」を作成。法務局へ預けた「体験記」を執筆しました。
前編では作成について、今回の掲載では法務局へ預けたプロセスについて執筆しています。

ぜひご覧いただき、これからの遺言作成・法務局へのご提出にお役立ていただくとともに、ぜひご不明な点では、当事務所が行っております「無料相談会」でお問い合わせください。

横浜地方合同庁舎(法務局)横浜地方合同庁舎(法務局)
◆◆【体験記】新制度「自筆証書遺言の法務局保管制度」(後編)~法務局での提出まで◆◆

2019(平成31年=令和元)年1月13日の「自筆証書遺言」の一部パソコン・ワープロでの作成可からスタートした実に約40年ぶりの相続法改正ですが、2020(令和2)年7月10日の「自筆証書遺言の法務局保管制度」の施行によって、予定されていたすべでの改正がスタート。

今回、この「自筆証書遺言の法務局保管制度」に関するご相談に備えるべく、法律や政令・省令、法務省ホームページなどを再度チェックしてみましたが、「これは一度体験をしたほうが、より実感をもってご相談者様にご説明できる」と感じ、自ら「遺言書」を保管してみることにしました。

「遺言書」ができたら、「申請書」を作って法務局に提出の予約をします。「申請書」の書式のダウンロードも、予約も、法務省の専用ホームページから簡単にできます。

予約はホームページの他、電話や法務局での予約も可能です。予約をしないと、受け付けてもらえませんので、必ず予約してから行きましょう。ホームページからの予約は、空いている時間が一目でわかりますので、抵抗がない方には簡単でおすすめです。

「申請書」は、もしかすると最初は書き方に戸惑うかもしれません。遺言書の内容によって、記載すべきところや不要なところが変わってきてしまうからです。
ホームページやパンフレットをしっかりと読み込んでいけば大丈夫だとは思いますが、もし面倒であれば、司法書士に作成を代行してもらうことも可能です。

横浜地方合同庁舎の7階・供託課が窓口となる横浜地方合同庁舎の7階・供託課が窓口となる
そして、予約の当日ですが、持ち物は下記の通りとなっています。

  • (1)住民票(本籍地記載あり、マイナンバー記載なし)
  • (2)3900円の収入印紙
  • (3)身分証明書

なお、「身分証明書」は、運転免許証など、写真入りのものでなくてはなりませんので注意が必要です。
「収入印紙」は、法務局で購入が可能です。

横浜市在住の方であれば、みなとみらい線の馬車道駅近くのいわゆる本局・横浜地方合同庁舎の7階、供託課が窓口になります。戸塚出張所などの出張所には預けられませんので、こちらもご注意を。

予約の時間に法務局の供託課に行き、「申請書」と「遺言書」のチェックを受けます。時間にして5分ほど。前編で触れた注意点の「余白」も定規を使ってチェックしていました。

「申請書」と「遺言書」のチェックを受ける「申請書」と「遺言書」のチェックを受ける

気を付けるべきは、ここでのチェックはあくまで基本的な書式に問題がないか(日付や押印の有無、上記の保管のための要件など)だけであり、「遺言書」の内容が有効か無効かなどについては見ていません。
その後、20分ほど待つと、「保管証明」という書類が出され、これで手続きは完了です。

感想ですが、正直なところ、自分で書いた(書いておいた)遺言をただ預ければよい、というわけではなく、結構気にする点も多くて、全体の作業を考えると、「公正証書遺言」(証人2名のもと、公証人が作成。証明力が高く、後日無効になりにくい)のほうが楽・・・だと思います。

しかし、比較的早い段階で、万が一の際のためのリスクヘッジとして「遺言書」を作成する場合に利用するには良いのではないかと考えますし、コスト面も含めて選択肢が増えたのは良いことです。

最後にもうひとつ注意点を・・・「遺言書」は原本を預けてしまいますので、コピーを必ず取っておくということも大切なポイントです。

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